──ビノレルビンの市場動向について
抗がん剤の1種である『ビノレルビン』の年平均成長率(CAGR)は、薬剤市場の中でもより大きいものになると予測されています。
既に多くのアナリスト(経済分析者)達がビノレルビンの市場成長を論じており、2018年から2023年にかけて市場が10~15%拡大すると予測されています。
理由の一つとして挙げられるのが、使用されるうちに追加で発見された効能が医療現場に広く浸透したことです。
もともとビノレルビンは、肺がん治療を目的として研究、使用が進められていました。
しかし2005年に協和発酵が「手術不能または再発乳がん」に対する効能の追加承認を取得し、乳がんの治療にも使われるようになり使用の場が広まりました。
また今日では世界規模のレベルで、がん患者が高齢化の進行と比例して増加しています。
効能追加承認などの技術的変化を筆頭に、抗がん剤需要の増加と市場規模の動向等、様々な要素を踏まえ、ビノレルビンの市場拡大が将来的に見込まれています。
──ビノレルビンとは
ビノレルビンは物質名としての名称で、商品名としては「ナベルビン」と称されます。
フランスの製薬会社、ピエールファーブルメディカメン社で開発された植物由来の抗がん剤です。
抗腫瘍効果のあるビンカアルカロイド系の薬として、微小管を構成するチューブリンというたんぱく質に作用することでその効能を発揮します。
他のビンカアルカロイド系と比較すると、油脂に溶け体内に蓄積されやすい脂溶性であること、神経への影響が少ないことが特徴です。
脂溶性であることから、開発当初は肺に作用しやすい抗がん剤として使用されていましたが、研究や使用例の増加とともに神経影響が少ないことが発見されます。
この効果が肺がんだけでなく、乳がん(特に手術不能または再発の患者向け)にも適応されるとがわかり、先述の通り、2005年に協和発酵が乳がんに対しての追加効能を取得し、さらに幅広い場面で活用されることになります。
──肺がん、乳がんについて
がんとは、遺伝子変異を起こした細胞が制御されない増殖を起こすようになり、各臓器の働きに侵食、治療を施さずにいると全身に転移してしまい高確率で死を招く病気です。
日本では心臓病、脳卒中と共に三大死因の病とされ、長年治療へのアプローチが行われています。
肺がんは、肺(特に気管支)に発生するがんで、タバコの喫煙や煙を吸うことによる受動喫煙が主な原因とされています。
がんのなかでも致死率はトップであり、その多くが発見の遅れにより治療が間に合わないというケースです。
一方乳がんは乳房組織に発生するがんを指します。発症原因は妊娠出産歴の少なさ、初経や閉経年齢の関係など女性の身体的組織が関わっているとされていますが、肺がんに比べるとその原因は未だ不明瞭なものが多いです。また女性だけでなく、男性にも発症する可能性があります。
──投与方法、副作用
以下の投与方法は説明文章から抜粋したものです。
使用に対するアドバイスではありませんので、受診の際は医師の指示に従って下さい。
【投与方法】
投与経路は静脈注射が主な方法です。
肺がん治療の場合は、1週間間隔で1回20~25mg/m2を投与します。1回の最高容量は25mg/m2なのでそれ以上の投与は推奨されません。
手術不能、再発乳がんの場合は、1週間間隔で1回25mg/m2の投与を2週連続で行い、3週目を休薬日とします。
なお、どちらも成人を対象とした条件で、年齢や症状の進行度により適宜変更していきます。医師の指示に従ってください。
【副作用】
一般的な抗がん剤同様、重大な副作用が生じる場合があります。
〇重大な例
〔骨髄機能抑制、 間質性肺炎、肺水腫、気管支痙、麻痺性イレウス、心不全、心筋梗塞、狭心症、アナフィラキシー、肺塞栓症、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、急性腎不全、急性膵炎、血小板減少、食欲不振、全身倦怠感、脱毛、吐き気、発熱、嘔吐、静脈炎、口内炎、便秘、下痢、知覚異常・腱反射減弱、アレルギー様症状など〕
重大な副作用の前には自覚症状が発症することが多いです。
ビノレルビンを投与している期間中に、少しでも自覚症状が現れた際には担当の医師、看護師に相談しましょう。
〇主な自覚症状例
・骨髄機能抑制⇒発熱、のどの痛み、口の中に白い斑点が生じる、下痢、腹痛、慢性的なだるさ
・間質性肺炎⇒空咳、軽度の運動ですぐ息切れがする
・肺水腫⇒、咳・痰が出る、呼吸、脈が速くなる
・心筋梗塞⇒胸の痛み、冷や汗が出る、息苦しさ
・アナフィラキシー⇒皮膚のかゆみ、蕁麻疹、目の周りの腫れ、意識の混濁
・急性腎不全⇒尿量の極端な増減、むくみ、発疹
・血小板減少⇒手足に点状出血、出血しやすい
●注意点
肺がん、乳がんに効力がよく見られるビノレルビンですが、安全に使用し治療に生かしていく為に注意点が3点あります。
①使用上、服用上の注意
・服用の間は避妊を行ってください。
・母乳を通じ成分が乳幼児に摂取される可能性があるので、授乳を避けてください。
・副作用の一種である骨髄抑制の自覚症状(発熱、だるさ、血が止まりにくい)が現れた際は早めに医師に申し出てください。血液検査で早期発見が可能です。
②医師や薬剤師からの確認事項
・妊娠または授乳中の有無
・薬による発疹などのアレルギー症状の遍歴の有無
・現在服用中の薬、摂取中の健康食品やサプリメントの種類
・便秘気味であるか
③服用の際に、以下の病状が現行してある、または過去にあった方は特に注意してください
・骨髄抑制
・肝障害
・虚血性心疾患、心臓に障害
・神経・筋疾患
・間質性肺炎または肺線維症
・便秘傾向
特に③は副作用の症状と合併してしまう可能性があるので、必ず医師へお伝えする様にしてください。